せっかくリンが街に取りに行ってくれたので、今日は早速ケーキを作ってみようかな。
いっぱい作らないとね。
女王陛下の分と、侍女さん達の分と、ルイーゼの分と、コックさん達の分と、カイエン様達の分も作ったら、かなりの量だね・・・。
頑張らないと。
朝ごはんを食べてすぐに、リンと一緒に厨房に行った。
マリーさんはすっかり回復して、今朝から仕事をしている。



「おはようございま〜す。」
厨房は昼ごはんの仕込みをしている人もいるけど、ほとんどの人が休憩している。
「よぉ、今日も作りに来たのか?」
今日も一番に声をかけてくるのは、料理長。
「はい、また貸して下さい。それとお願いがあるのですが。」
「何だ?」
「作るのを手伝ってくれる人も、何人か貸して下さい。」
「今なら暇だからいいぞ。何人必要だ?」
「3、4人ほしいです。」
「よし、誰か手伝いたい奴いるか?」
その場の全員が手を挙げた。
もしかして、みんな作ってみたかったのかな?
「おい、仕込みやってるやつはそのまま続けろ。あとの奴で適当に決めろ。」
料理長の怒鳴り声が響いた。
「じゃあ、手が空いている人みなさん、手伝ってください。」
手の空いている人は、うれしそうに私のところに来たけど、仕込みをしている人は恨めしそうな顔をしていた。
私が悪いわけじゃないんだから、そんな顔されてもね・・・。

今回は私は指示するだけにして、コックさん達に作ってもらおう。
そしたらやり方覚えるし、次から作ってもらえるじゃん。
そのうち食後のデザートにお菓子が出てくるかもね。
あっ、街で売れなくなっちゃう?
全部を教えなかったら大丈夫かな?

材料を用意して、コックさん達に混ぜてもらう。
さすがにコックさんは私より手際がいい。
人数が多いと早いね。
混ぜてもらった生地を型に流し込み、オーブンに入れる。
手伝ってもらうのはここまで。
あとは焼き上がったら、私がデコレーションする。
デコレーションするのは、けっこう好きなんだよね。
仕込みが終わったコックさん達も、手伝えることがないか聞かれたけど、なかったからションボリされちゃった。

「今日は何を作るんだ?この前のパウンドケーキってやつか?」
「似てますけど、ちょっと違いますよ。街のケーキ屋さんで売ってるようなやつです。」
「そうか。楽しみだな。」
料理長は、鼻歌を歌いながら厨房の奥に入って行った。
厨房の奥には食材がたくさん置いてある。
市場のお店1軒分より多いんじゃないかと思うくらいの量と種類が置いてある。
何度か入ったけど、見てるだけで面白い。

ケーキが焼き上がったので、荒熱をとってから、3枚にスライスする。
コックさん達全員の視線が私に集中しているから、ちょっと緊張する。
さっき手伝ってもらわなかったコックさん達に、生クリームの泡立てを頼んだら、喜んでやってくれた。
生クリームと半分に切ったイチゴを並べて、3段重ねて上から生クリーム。
袋に口金をつけて生クリームを絞っていくと、コックさん達から歓声が上がった。
それからフルーツを飾って終了。
見栄えいいわ。
我ながらかなり美味しそう。
これなら十分売れそうじゃん。
コックさん達もくいいるように見ている。

「完成か?」
「はい。2個はお裾分けなので、適当に食べてくださいね。」
すぐ飛びつくかと思ったけど、今回はコックさん達は誰も手を出そうとしない。
あれ?
何かだめだったかな?
「どうかしましたか?」
「あまりにも綺麗で食べられないんだよ。」
コックさんの1人がそう言うと、みんな頷いた。

料理長は、躊躇いもなくカットして食べると、コックさん達も食べ始めた。
「どうですか?」
「おいしいぞ。今まで一番かもな。何より見た目がよかったな。」
なるほど。
やっぱり見た目だよね。

残りのケーキを崩れないように箱に詰めて、1箱は女王陛下のところに、1箱はルイーゼの家に運んでくれるように頼む。
侍女さん達と食べる用の1箱とカイエン様達用の2箱を持って部屋まで戻ることにした。
「ありがとうございました。また貸して下さいね。」
「ああ、また楽しみにしてるぞ。」
ご機嫌な料理長とコックさん達は、幸せそうだ。



部屋に戻るとすでに侍女さん達がお茶の用意をして、スタンバイしていた。
箱を開けてケーキを出すと、歓声が上がる。
「すごいですわ。」
「綺麗ですね。」
「食べるのがもったいないくらいですわ。」
しばらく眺めていたけど、いつまでも眺めているわけにいかないので、カットした。
取り分けて、お皿に乗ったケーキを見ても、みんな幸せそうだ。
作ったかいがあるよ。

生クリームとイチゴの酸味が絶妙。
やっぱりショートケーキおいしい。
「ほんとケーキおいしいですね。沙羅様すごいです。」
リンはキラキラした目で私を見ている。
そんな目をされてもこれ以上何もできないんだけど・・。










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