次の日も訓練場に騎士の姿はなかった。
みんな今日も忙しいのかな?
今まで使っていた剣は、カイエン様に貰ったものだったから、壊れた事を伝えて、まだ剣が余ってたら貰おうと思ってたのに、残念。
いつも剣を持ち歩いているわけじゃないけど、ないと不安になる。
しばらくカイエン様は多忙なのかな?
街に行けば、剣って売ってるのかな?
リンも剣はカイエン様から貰ったので、街で買ったことはないらしい。
とりあえず私たちは街に剣を見に行くことにした。

一番の目的は剣、あとはお菓子の材料や、調理器具なんかも見たい。
心苦しかったけど、ルイーゼと買い物に行った後、女王陛下から少しお金を借りた。
女王陛下は返さなくていいと言ってたけど、あとで返すつもり。
まだ返せるあてはないけど、いつか・・・。

今回はリンがどうしても馬車で行くと、譲らなかったので、仕方なく馬車。
王宮の馬車なので無料だけど、歩ける距離だし、歩きにくいドレスを着ているわけでもないから、馬車に乗らなくてもいいのに。



まずは武器屋さん。
初めて入ったけど、いっぱい武器が並んでいる。
剣、鞭、棍、斧、槍、弓などの武器。
盾、鎧などの防具。
気分はRPGの世界。
鉄扇がないのが残念。
鞭とか使ってみたいけど、上級者向けかな?
見ていると、結構楽しい。
ずっと見ていてもきりがないので、お店の人に今まで使っていたのと似たような形の剣を、並べてもらった。
その中で1本だけ、妙に気になる剣があったので、手に取ってみた。
装飾も少なくて、実用的な感じ。
これがいいな。
値段もそんなに高くないから、決定。



次はお菓子の材料が売ってそうな食材やさん。
王宮の厨房にだいたいの材料はあるけど、ナッツ類は見たことがない。
クルミやアーモンドに似た物がないか、探してみたかった。
豆類を売ってるお店で探したけど、なかなかいいのがない。
食感がよくても味がいまいちとか。
しょうがないから、今回はあきらめる。
ないとダメというものではないから、気長に探そう。



次は調理器具屋さん。
欲しいのは、ケーキのデコレーションや絞り出しクッキーで使う口金。
クッキーやケーキの型は、厚紙で作ったりして、何とか代用できるけど、口金って代用できる物がなかなかない。
この世界のケーキは、デコレーションなんかほとんどなしだから、生クリームを絞って飾ったら、かなりうけそう。
ケーキにとって見栄えって重要だよね。
なかったので、金物屋さんで特注した。
どうせ特注するならついでに、ケーキの焼き型とクッキーの抜き型を数種類頼むことにした。



帰りに、ケーキ屋さんの前を馬車で通ると、相変わらずすごい行列ができている。
私も街でケーキ屋さんやろうかな。
絶対儲かるよね。



王宮の自分の部屋に戻ると、マリーさんがそわそわしながら待っていて、私に気がついてほっとした表情になった。
「ただいま戻りました。どうかしたんですか?」
「お帰りなさいませ。さきほど女王陛下から、戻られたらすぐに謁見室に来るようにと使いの方が。」
何だろう?
全く覚えがないけど。
「わかりました。使いの人はどれくらい前に来られたんですか?」
「10分ほど前です。」
まだそんなに時間が経ってないから、大丈夫かな。
「では行ってきます。」
もちろんリンも一緒だ。
すぐに言われたし、着替えずにそのままの格好で向かう。
街へ行くのに、シンプルだけど一応ドレスを着ているから問題ないはず。
心配そうなマリーさんに見送られながら、休憩もせずに謁見室へむかった。
「いったい何でしょうね。」
リンも不思議そうだ。
「何だろうね。」
妖魔の事件には私は関係ないし。
もしかしてアレンのことがバレた?



謁見室には珍しく女王陛下だけ。
「待ってましたよ。」
女王陛下は機嫌が良さそうだから、悪いことではなさそう。
でもいつもより顔色が悪く、疲れているように見えた。
「あの。」
「料理長から聞いたのですが、沙羅の作ったお菓子は絶品とか。私も食べてみたいわ。」
そんなことか・・・。
ちょっと拍子抜けした。
わざわざ呼び出されたからもっと重要な事かと思ってたよ。
「では今度作ったら、お持ちします。」
「できるだけ早くお願いね。」
「今日材料を街で注文してきたので、それが出来上がり次第作ります。それでかまいませんか?」
「仕方ないですね。それでいいです。」
生クリームとフルーツで思いっきりデコレーションしたケーキをプレゼントしよう。
きっとびっくりしてくれるはず。

「街が妖魔に襲われたと聞いたのですが・・・。」
「ええ。」
さっきとは違って、女王陛下の表情は冴えない。
「被害はどれくらいなんですか?」
「あまり大きくない街でしたから騎士たちも少なくて・・。街の半数以上の人がなく亡くなりました。」
そんなに・・・。
後ろのリンからも驚いている気配がする。
「どんな妖魔だったのですか?」
「狼種、猿種、鳥種など種類は様々だったようです。こんなことは初めてで城中バタバタして沙羅もびっくりしたでしょう?明日には近衛騎士の精鋭部隊を現地に送って、妖魔の討伐をする予定です。」
なるほど、それなら近衛騎士は忙しいよね。
「精鋭部隊というのは、カイエン様やザクセンさんも行かれるのですか?」
「カイエンは万が一王都に何かあった時の為に残りますが、ザクセンには指揮をしてもらいます。彼らが行ったら城内の警護も少し手薄になるので、沙羅も十分注意してください。」
「わかりました。」









前のページ  「精霊の半身」目次ページ  次のページ

inserted by FC2 system