ずっと暗い中を歩いていると気が滅入ってくる。
今って、まだ夜なのかな?
今がいつなのかさっぱりだ。
一睡もせず歩いているから、もうクタクタ。
ここだと、いつあの妖魔が来るかわからなくて、出ることを最優先にしているので、休憩もほとんどしていない。

「外はまだかな?」
「まだ先だな。」
段々眠たくなってきた。
でも遠くで、あの妖魔の声らしきものが聞こえてきて、目が覚めた。
もしかして、さっきの小さい妖魔が全滅しているのがバレテ、怒っているとか?
「急ごう。」
私たちは気力を振り絞って走った。
追いつかれたら大変だ。



「この辺りから匂う」
アレンがそう言ったから、必死に出口らしきものを探した。
ない。
どこよ?
特に今まで歩いてきた空間と変わったところはない。
「あれだ。」
ザクセンさんが上を見上げて叫んだ。
上?
頭上に小さな穴があいて、かすかに光が差し込んでいる。
でも高いし、小さい・・・。
これでどうやって?
ザクセンさんが背伸びしても届かない位置だ。
やっと見つかったけど、これでは地上に戻れない。
妖魔の近づいてくる音が大きくなってきた。
このままでは追いつかれてしまう・・・。



「沙羅様、そこにいらっしゃいますか?」
頭上からリンの声が聞こえた。
どうやらこの上にいるみたい。
よくここがわかったね。
「リン。ここにいるよ。リオ様とティアナも一緒なの?」
私は大声で叫んだ。
「はい。」
「みんな無事?」
「はい。沙羅様達もご無事ですか?」
よかった。
みんな大丈夫だとは思っていたけど。
どうなったか、気になっていた。

「私たちも大丈夫だよ。でも地上に出られなくて困ってるの。」
「少し離れていて下さい。」
ティアナはそう言ったけど、離れるってどれくらい?
考えている間に、ドカンッと頭上で爆発が起こった。
ザクセンさんが私を庇うように、覆いかぶさって地面に伏せた。
地下の空間に大量に土がなだれ込み、砂煙を吸いこみ、咳が止まらなくなったが、おかげで大きな穴が開いた。
眩しい太陽の光が、周囲を明るく照らしているから、夜は明けたみたい。

あとは上に上るだけだけど、どうやって?
アレンが、黒ライオンの姿になった。
「早く乗れよ。上まで運んでやる。」
「2人も運べるの?」
「オイラに任せとけ。さっきいっぱい食べたからな。」
う〜ん。
あれも役に立っているのか。
私とザクセンさんを背中に乗せて、上までジャンプ。
すごいジャンプ力。
ようやく地上に出られた。



「沙羅様、どこも怪我はないですか?」
リンが駆け寄って、私の顔をのぞきこんだ。
「大丈夫。ずっと歩いて疲れたくらい。よく私たちがここにいるってわかったね。」
「フフッ、愛の力です。」
ティアナがつぶやいた。
愛の力って・・。
聞かなかったことにしよう。

「またあの妖魔が来ないうちに、さっさと砂漠を越えてしまおう。今はどの辺りかわかりますか?」
リオが持っていた地図を広げた。
「少しルートからはずれたが、もう少しで砂漠を越えられる。」

私とザクセンさんは、リンから水と食料を貰って、すぐにお腹に詰め込んだ。

「私たちが流砂に飲み込まれた後は、どうなったの?」
「妖魔が散々暴れ回って、落ち着いたら、お前達がいなくて、びっくりしたぞ。」
「ごめんなさい。」
私が悪かったです。
リオはご機嫌斜めの様子。
「ご無事でよかったです。ティアナさんが沙羅様の位置を見つけてくれました。」
「どうやって、ティアナはわかったの?」
前からそういう力があるなら、私がはぐれた時も、一番に見つけられたんじゃない?
「今回は目印がありましたから。」
ティアナはリオと違って、ニコニコしている。
目印なんて持ってないよ。
「リオから貰ったネックレスです。 しばらくリオが持っていたので、リオの匂いが残っているんです。」
ネックレスの匂いを嗅いだけど、私にはわからない。
半身にしかわからないのかも。
このネックレスのおかげで、助かったのか。







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