パーティーは2日後にした。
朝から厨房でケーキとクッキーを作って、パーティーはザクセンさんたちの騎士の仕事が終わった夕方から。
クッキーをツリーに飾っていると横からアレンが食べようとしたので、リンが怒った。
「これは食べちゃダメ。邪魔するなら部屋から追い出すよ。」
「ちょっとくらいいいだろ。」
リンとアレンがにらみ合う。
一緒に住んでるわりには、リンとアレンはたいして仲良くなってないな。
「アレン、それはダメだよ。あとであげるから我慢してね。」
恨めしそうにクッキーを見つめているけど、あげずにどんどん飾って、最後の1つをアレンにあげた。
1つくらいはいいか。
「いいんですか?沙羅様はアレンを甘やかしすぎです。」
横でうれしそうに食べるアレンと対照的にリンは不満そう。

マリーさんはさっきから数人の侍女さんたちとテーブルに料理を準備してくれている。
手伝ってくれている侍女さん達もパーティーに参加してくれる。

ノックされたので、ザクセンさんとカイエン様が来てくれたと思ってドアを開けたら、立っていたのはカール殿下。
「こんばんわ、沙羅。パーティーをすると聞いたけど、僕も参加していいかな?」
「あっ、はい。どうぞ。」
カール殿下に入ってもらうために道を開けると、入りながら後ろに持っていた薔薇の花束をくれた。
すっごく大きな花束。
今まで貰った中で一番かも。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。」

カール殿下の登場に侍女さん達が歓声を上げる。
カール殿下は侍女さん達にウィンクする。
マリーさんは花束をすぐに花瓶に活けてテーブルに飾ってくれた。

しばらくしてザクセンさんとカイエン様が来てくれた。
2人の登場にも侍女さん達は歓声を上げた。
侍女さん達ってミーハーだね。

座っていたカール殿下にカイエン様が声をかけた。
「殿下も来ていたのですか。」
「来ては駄目だったかな?」
「そんなことはないですが、昼間話していた時は興味なさそうでしたよね?」
「君達が行くなら、僕も行かないわけないだろう?」
「はぁ。」
「君たちは呼ばれたのに手ぶらで来たのかい?」
カイエン様とザクセンさんが顔を見合わせて、しまったという顔をしている。
そんな2人を勝ち誇ったような顔をしてカール殿下は見ている。
「僕はちゃんと持ってきたよ。ほらもうテーブルに飾ってあるだろう。」
テーブルの花を見て、2人が慌てて私のところにやってきた。
「すいません。今日は何も持ってきていなくて・・・。」
「すまん。」
2人に謝られても困ってしまう。
そんなつもり呼んだわけじゃないし。
「気にしないてください。2人にはいつもよくしてもらってますから。」
2人に笑いかけると、2人ともほっとした様子。



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今日は立食形式のパーティー。
私はルイーゼのお茶会で気に入ったお酒を飲みながら、リンと食べている。
侍女さん達も楽しそうに食べている。
カイエン様とザクセンさんとカール殿下も楽しそうにお酒を飲んでいる。

アレンはお皿に取り分けた食事を食べた後欲しそうにお酒を見ていた。
アレンってお酒飲めるのかな?
あげたことない。
「飲んでみる?」
「うん。飲んでみたい。」
アレンのお皿にお酒を注ぐ。
少し注ぐつもりが、手が滑ってお皿いっぱいに注いでしまった。
最初は用心深く少し舐めた後、気に入ったのかすごい勢いで舐め初めて、お皿が空になった。
「気に入った?」
「うん。もっとくれ。」
「いいよ。」
あまりの飲みっぷりにどんどん注ぐと、突然アレンがパタッと倒れた。
あれ?
どうしたんだろう?
慌ててアレンを抱っこするといびきをかいて寝ていた・・。
人騒がせな・・・。
「仕方ないですね。」
リンがアレンを抱っこしてソファに寝かせてくれた。

「リンはお酒飲まないの?」
「私はあまり・・。」
「苦手?」
「飲めないわけじゃないですが、あまり好きじゃないです。」
「そのわりにかなり強いけどな。」
ザクセンさんがグラス片手に横に来ていた。
「強いんですか?」
「おう。俺より強いぞ。騎士連中で飲み比べした時に俺より飲んでたからな。」
それはすごいなぁ。
「飲んでも全然顔にも態度にも出ない。他の奴らが酔いつぶれて倒れてても平然としていたからな。」
意外。
リンを見ると隣にいたはずなのに、いなかった。
もしかして気をきかせてくれたのかな?

「楽しんでもらってますか?」
「ああ。木は綺麗になったな。」
「はい。」
そういえばクリスマスって恋人と過ごすイベントでもあったよね。
今回はみんなでわいわいだけど、次はザクセンさんと2人でっていうのもいいかな。
木を見ていたザクセンさんが私を見たので、恥ずかしくて目を反らした。
そんなこと考えるのは私だけかな・・。
「ちょっとテラスに出ないか?」
「はい。」

2人でテラスに出る。
今日も綺麗な月夜だった。
顔に冷たいものが当たったと思って見上げたら、雪だった。
雪が降ってくる。
ミツキが降らしてくれたんだ。
やった〜
はしゃいで喜んでいると、ザクセンさんに笑われた。
ザクセンさんは珍しそうに雪を見ている。
きっとみんなびっくりしているだろう。
部屋の中が急に騒がしくなった。
雪のせいかと思ったけど、何だか違う感じだ。
戻った方がいいかな?
「戻りましょうか。」
「そうだな。でもその前に。」
戻ろうとしたところをザクセンさんに腕を掴まれて、勢いよくザクセンさんに引き寄せられた。
そのままザクセンさんの腕の中。
見上げるとすぐ近くにザクセンさんの顔。
私とザクセンさんの唇が重なる。
そこに慌てた様子のリンが来たので、慌ててザクセンさんから離れた。
たぶん見られたよね・・。
こういう場面は恥ずかしいから見られたくないんだけど。

「大変なんです。」
「何が大変なんだ?」
ちょっと不機嫌そうなザクセンさん。
ザクセンさんが不機嫌なのって珍しい。
私とのキスを邪魔されたせい?
そうならうれしいけど。
「それが女王陛下がいらして。」
えっ!?
「女王陛下!?」
私とザクセンさんが同時に叫んだ。

慌てて部屋に戻ると、レオを抱いて楽しそうな様子の女王陛下と不機嫌そうなリオがいた。
どうして2人が?
「楽しそうなことをしていると聞いて、来てしまいました。」
侍女さん達は固まっている。
「来て下さってありがとうございます。」
「フフッ、美味しそうなケーキもありますね。」
女王陛下の視線の先にはケーキ。
まさかそれ目当て??
ケーキを1切れのせたお皿を渡すと、レオをリオに預けてケーキを食べ始める女王陛下。

「俺をどうして呼ばなかった?」
「えっと・・。」
リオは怒っているらしい・・・。
「ごめんなさい。急に決まったしリオ様は忙しいんじゃないかと・・・。」
「まあまあリオ。そんなに怖い顔すると寝ているレオがおきてしまうよ。」
カール殿下がリオの肩を叩く。
リオがカール殿下を睨んだけど、カール殿下は笑っている。
「叔父上も来ているのに。俺だけ・・・。」
リオがブツブツ文句を言っていると急に起きたレオが泣き始めた。
慌ててあやすリオ。
レオが泣きやんだときには、リオの怒りも収まっていた。


そのまま真夜中までパーティーは続いた。







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