何気なく庭園を散歩していたら、私の身長ほどの木が目についた。
そろそろ向こうの世界ではクリスマスシーズンじゃないかな?
この時期って一番好きなんだよね。
街を歩くだけでもクリスマスの飾りつけが綺麗にされていて楽しいよね。
クリスマスのねずみの国行きたいなぁ・・・。

「この辺りは雪は降らないの?」
後ろを歩いていたリンを振り返る。
「雪ですか・・。この辺りは1年中気候が温暖ですから、雪は降りません。突然どうされましたか?」
「なんとなく・・・。」
「雪がお好きなんですか?」
「まあまあかな。」

この世界にクリスマスなんてイベントはないに決まってるけど、飾るだけでも楽しもうかな。
「あの木貰えないかな?」
さっき見つけた木を指差すと、リンが木の横に立つ。
「これですか?」
「うんそれ。」
私が頷くと、リンが木を両手で掴むと、力任せにひっこ抜こうとしたので、慌てて止めた。
「待って。そうじゃなくて鉢に植え替えてもらえないかな?」
「・・・わかりました。では植木鉢を探してきます。木はお部屋に置くのですか?」
「それがいいね。」
「沙羅様は先に部屋に戻っていて下さい。」
「うん。お願いね〜」
リンが走り去るのを手を振って見送る。
わくわく、次は何を飾るか考えないとね。



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私が部屋に戻ってしばらくしてからリンが部屋に戻ってきた。
木を運んできてくれたのは、ザクセンさんとカイエン様でびっくり。
リンだけで持ってくるのは無理だから、てっきり庭師のおじさんが運んでくれると思っていた。
「これはどこに置いたらいいんだ?」
「窓のそばにお願いします。2人ともありがとうございました。」
「いえいえ、ちょうど暇でしたから。」
2人ともけっこう重いと思うけど、涼しい顔をして窓のそばに木を置いてくれた。
「こんな木どうするんだ?どうせ飾るなら花の方がいいんじゃないのか?」
ザクセンさんが木を見ながら不思議そうにしている。
「今はただの木ですけど、これから綺麗に飾るつもりです。」
「飾る?」
「どんな風になるかは飾ってからのお楽しみです。」
びっくりするぐらい綺麗にするぞ。
「それは楽しみですね。飾りつけができたら見せていただけますか?」
「はい。是非見に来て下さいね。」
せっかくだからケーキとかも作ってクリスマスパーティーみたいなのもいいかも。

ザクセンさんとカイエン様が帰った後、リボンとベルを貰ってきて、リンと一緒に飾った。
リボンはやっぱりクリスマスカラーの赤と緑。
でもこれだけじゃあね。
パーティーの日はクッキーでいろんな形のオーナメントを作ろう。
「綺麗になりましたね。」
リンは木を見てうれしそうだ。
「あの木がこんな風になるとは思いませんでした。沙羅様の前にいたところではこんな風に木を飾っていたのですか?」
「ちょっとの間だけ飾るの。」
私の家はキリスト教じゃなかったから、クリスマスと言ってもツリーを飾ってケーキを食べるくらいしかしなかった。
サンタさんも小学校に入る頃には、両親だとわかってた。
「ちょっとだともったいない気がしますね。」
「その間だけいっぱい鑑賞すればいいよ。せっかく飾ったし、みんなも呼んでパーティーしよう。」
「今からですか?」
「ケーキを作ったりするから、パーティーは明日以降。みんな来てくれるかな?」
「どなたを招待されますか?」
「ザクセンさんと、カイエン様と、アレンあたりかな。」
「ザクセン様とカイエン様は呼んだらいつでも来てくださると思いますよ。ドレスを手配しないといけませんね。」
「ドレスを着るような堅苦しいパーティーじゃなくて、もっと軽い感じの。リンもマリーさんも当然参加ね。」
「私もいいんですか?」
リンはびっくりしている。
「もちろんだよ。」
みんなで楽しめるといいな。



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夜に飾りつけたツリーを一人で見て楽しんでいると、いつの間にか後ろにミツキが立っていた。
「ずっと眺めているが、そんなにその木がいいのか?」
「あっ、ミツキいつからいたの?全然気がつかなかったよ。」
私の横に立ってミツキもツリーを見ている。
「私の元いた世界では毎年飾ってたの。何だか向こうの世界が懐かしいな。」
お母さんやお父さん、みんな元気かな?
今頃どうしているかな?
家族で楽しくクリスマスを過ごしていた頃が懐かしい。
ミツキの手が私の顔に触れた。
「帰りたいのか?」
ミツキが悲しそうな顔をしているように見えた。
帰りたいと思わないわけじゃない。
でもミツキだって、ザクセンさんだって、リンだって私の傍にいてくれる。
私にはみんながいてくれるから寂しくない。
もうみんなに会えなくなる方が辛い。
「私の居場所はここだよ。だからずっとそばにいてくれる?」
「当り前だろう。」
ミツキが笑ってくれたから、私も笑った。

「そうだ。ミツキもパーティーに来れない?」
「パーティーか・・。」
ミツキは渋面だ。
「うん。駄目かな?ケーキとか作るし、きっと楽しいよ。この機会にミツキもみんなと仲良くなってほしいな。」
「俺はやめておく。」
「・・・そっか。」
ミツキはティアナみたいにみんなと仲良くするのは嫌なのかな?
無理強いはしたくない。

「前にいた世界では木を飾る以外にどんなことをしたんだ?」
「ん・・。プレゼントをもらったりとか。」
「プレゼントか。何かほしいものはあるか?パーティーにはでてやれないから、ほしいものがあったら、もってきてやる。」
ミツキからプレゼントか。
うれしいけど、何がいいかな?
ほしいものって特にないなぁ。
「パーティーの時に雪が降ってほしい。そんなの無理だよね?」
「雪か。それくらいならできるぞ。楽しみにしてろ。そんなものでいいのか?」
「うん。」
ホワイトクリスマス〜









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