―― ルイーゼ視点 ――


半年ぶりのお茶会が無事終了しました。
今回は久しぶりにリオ様が出席してくださって、うれしかったです。
リオ様は王都におられる時に誘っても、断られてばかり。
今回も断られる気がしましたから、招待状を出さずに沙羅につれてくるよう頼んだんです。
沙羅と現れたときは、少しびっくりしました。
危険も省みず沙羅を追いかけたぐらいですから、リオ様にとって沙羅が大切なのはわかってましたけど。
先ほど数人のご令嬢たちに、嫌がらせを受けていた沙羅に、私より早く気がついておられたし。
お茶会のあいだも、よく目で沙羅を追いかけていたのも、気がついていました。
このままでは沙羅に勝てませんわね。

でも沙羅のことは大好きです。
初めての友人ですもの。
沙羅に嫌がらせしていた人たちにしても、上流貴族の人たちは自分より下の相手を見下して、上の相手には媚びへつらうような人たちばかり。
私の顔色を常に伺いながら会話しても、全然楽しくありませんでした。
普通に話せるのは、家族かリオ様くらい。
沙羅はそんな貴族たちとは違って、思ったことをハッキリと話してくれた。
裏表のない性格にびっくりしました。
母以外の女性と一緒にいて楽しいなんて初めてでした。
沙羅とはこれからもずっと友人として、つきあっていきたいと思っています。



応接室を通りかかると、ザクセン兄様がお酒を飲んでいました。
さっきあれほど飲んで、まだ飲み足りないとは、いったいどれだけ飲むつもりなのか。
呆れて何もいう気になれません。

「無事終わってよかったな。 お前も飲むか?」
「いりませんわ。 今日は手伝っていただきありがとうございました。」
ザクセン兄様も貴族の人たちとのつき合いが苦手だ。
お茶会はおろか、パーティーだって、滅多に参加されない。
貴族たちとのつき合いを避ける為に、わざわざ騎士になったくらいですもの。
騎士になってからは女っ気もほとんどなくて、結婚する気があるのかはちょっと心配ですけど。
横にあんな素敵なカイエン様がおられたら、兄様がモテないのも仕方ない。

「カイエン様とカール殿下の一騎打ちだったら、もう少し場も盛り上がったのに。 早々に自分が負けるくらいの気を使っていただきたかったですわ。」
大多数の出席者は、カイエン様とカール殿下の一騎打ちを見たかったはず。
私ももちろんですけど。
相変わらず空気の読めない人です。

「仕方ないだろ。あの2人が先に負けたんだから。それより沙羅が嫌がらせされたらしいな。」
あら、どこから聞きつけたのかしら?
ザクセン兄様も沙羅に関しては、目ざといのかしら?
「そうですけど、他の方々の性格を考えますと、仕方ないですわ。 兄様もよくご存知でしょう。」



「お嬢様、カイエン様とカール殿下が、目を覚まされました。」
執事の知らせで、わたくしとザクセン兄様はお2人が休まれている部屋へ。
お2人ともすでに起きて、身支度を整えておられました。

「ご迷惑をおかけしました。」
カイエン様がわたしくし頭を下げられた。
「ご迷惑なんて。気になさらないで下さいませ。お2人とももう大丈夫ですか?」
「私は大丈夫です。」
「僕ももう大丈夫だよ。 みっともないところを見られてしまったね。」
お2人とも、もう顔色もいいし、この調子なら大丈夫でしょう。

「ザクセンは酒強すぎだよ。」
「すいませんね、カール殿下。殿下も十分頑張られたと思いますよ。俺が普通じゃないだけで。」
「普通じゃない強さだったな。沙羅様に嫌われていないといいが・・。」
「それは心配いらない。沙羅は2人の事を心配していたから。」
そんなことで嫌いになるような沙羅ではないでしょう。
「それより早く帰らないと、明日の訓練に響きますよ。 沙羅にはそっちの方が嫌われそうだ。」
慌ててお2人が立ち上がった。
お2人とも沙羅の事が本当に好きみたい。
夜も遅いので、我が家の馬車でお2人をお送りした。



最後の客も送り出したので、やっと肩の荷が下りましたわ。
今度はまた半年後までお茶会は開かなくてもいいでしょう。
少し疲れましたわ。

わたくし1度友人と一緒に買い物に行ってみたかったの。
今度沙羅を誘ってみましょう。
フフ。

この際だから平民の恰好をして、行ってみるのも面白そうだわ。
平民の服を調達しておかなくてわ。
楽しくなりそうだわ。

当日までみんなには内緒にしておきましょう。
きっとその方が楽しいですわ。







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