夕方になって、レオナーさんの使いで魔法使いのお弟子さんに連れられて、魔法使いの修行場兼魔法使いの居住地である、最初にレオナーさんに会った塔に来た。
レオナーさんは何の話だろう?
お弟子さんに聞いても、何も知らないと言われた。
このお弟子さんとはリンの弟弟子になるらしくて、リンとも仲が良さそうだった。
リンはついてこようとしたけど、レオナーさんから私1人を連れてくるように言われたので、断られていた。
しばらくの間リンとアレンには部屋に戻っておいてもらうようにした。
久しぶりにきた塔は、相変わらず静かだった。
現在この塔には10人ほどの魔法使いしかいないらしいから、それも納得。
どうしてそんなに魔法使いって少ないのかな?
魔法が使えると便利そうだから、もっとなりたい人はたくさんいると思うんだけど。
確かに魔法を使うのは、難しいけどね。
レオナーさんの話って、もしかしたら妖魔の討伐で使った私の治癒魔法についての話かな?



塔の最上階のレオナーさんの部屋に連れてこられた。
ここに入るのは初めてだ。
本棚がたくさんあって、古そうな本が隙間なく並んでいる。
全部覚えているとしたら、すごいな。
ついキョロキョロしてしまったけど、レオナーさんは黙って待っていてくれた。
「どうぞ、座ってください。」
ソファに座ると、レオナーさんがお茶を持ってきてくれた。
弟子ではなくて、レオナーさんからお茶を入れてもらえるとはびっくりだ。

「あのお話って・・・。」
レオナーさんとむかえ合わせで座ると、なんとなく居心地が悪い。
レオナーさんは飲んでいたお茶を置くと、私をじっと見た。
真剣な目でじっと見られたので、つい恥ずかしくなって目をそらしてしまう。
「あの・・・・。」
「話しておかないといけないと、ずっと思っていたのですが。ヴァレリーの事です。」
私が頷くと、レオナーさんは話し始めた。

「ヴァレリーは実は私の実の弟で、一緒に魔法を学んでいました。ヴァレリーはとても優秀で、正義感も強く、将来この国一番の魔法使いになると期待されていました。」
最初から悪い魔法使いってわけじゃなかったんだ。
兄弟ってことは、レオナーさんも肩身の狭い思いしたんだろうな。
「リオ様の父親について聞いたことはありますか?」
「ないです。」
母親が女王陛下ってことはわけってるけど、父親は知らない。
なんだか聞いちゃいけない気がした。
「リオ様の父親、女王陛下の夫がヴァレリーです。」
「えっ!?」
思わず叫んでしまって、慌てて口をおさえた。
父親が悪い魔法使いって・・・。
「リオ様は知ってるんですか?」
「ご存じないと思います。」
知ったらショックだろうな。

「ヴァレリーが女王陛下の夫となったのは、まだ女王陛下が即位する前でした。それは誰もが羨むくらい仲が良くて、2人でこの国を立派におさめていくと思っていましたが・・・。」
段々とレオナーさんの顔が曇って行く。
私はできるだけ黙って聞くことにした。
「女王陛下がご懐妊し、双子の男の子が生まれました、1人はリオ様です。もう1人は、産まれて1年もたたずに流行り病で亡くなりました。亡くなったのはちょうどヴァレリーが地方に巡回しているときで、帰ってきて後悔していました。」
子供の死にめに会えなかったら、後悔するよね。

「それを境にヴァレリーは変わっていきました。禁断魔法を学び始めたのです。」
「禁断魔法?」
「はい。禁断魔法とは、本来魔法は使用者の魔力を媒介にして使うのはご存じだと思いますが、禁断魔法の場合は使用者の魔力だけでなく、他のものも媒介に使います。もっとも禁忌とされているのが、人の命を媒介にする魔法です。」
生贄ってことかな?
そんな魔法あったんだ・・・・。

「ヴァレリーは子供を生き返らせるために、徐々に人の命を使って、禁断魔法を使い始めたのです。私や女王陛下が気がついたときには、すでに何人もの罪もない人の命が奪われた後でした。」
「それで、その子供は生き返ったんですか?」
レオナーさんが首を横に振った。
「それでも生き返りませんでした。ヴァレリーはどんなに止めても魔法を使い続けようとしたため、王都から追放し、魔法使いの称号を剥奪され、魔力を封じられたはずでしたが・・・。誰かがその魔力の封印を解いたようです。ヴァレリーが恐れられているのは、たくさんの人を犠牲にした禁断魔法のせいです。」
レオナーさんが目で確認してきたので、頷く。
ここまでは一応理解できた。

「追放されたヴァレリーの名前が再び囁かれ始めたのが、あなたの一族が殺された事件です。あなたが目的だったというのは、あくまでわれわれの推論でしかありませんが。ヴァレリーはおそらく力を求めているはずなので。」
「では誰か協力者がいるってことですよね?心当たりはあるんですか?」
「いいえ、正直全くありません。そこらの魔法使いに解けるような封印ではありませんし。できるとしたら精霊ぐらいでしょうか。」
精霊・・・あの闇の精霊って関係あり?

もっとヴァレリーが悪い人ならよかったのに。
そしたらもっともっと憎めたのに。
私の家族や、村の人たちを殺したことは憎いし、許せないけど、子供を生き返らせる為だったら・・・、わからなくもない。
私に子供いないけど、もし家族が死んで、生き返らせる方法があるなら、それがどんなものでもやってしまいそうな気がする。
気持ちはわかるけど・・・、やってはいけない。

私はまだ狙われているんだろうか?
最初にこの世界に連れてこられた以外は何もされていないし、もういらなくなった?
私を狙っていたのは、本当にミツキの力がほしかったから?
でも封印を解くほどの精霊の力を借りれたなら、ミツキの力なんて必要ないんじゃないのかな?
なんだか考えなきゃいけないことだらけ。
頭がどうにかなっちゃいそうだよ。










前のページ  「精霊の半身」目次ページ  次のページ

inserted by FC2 system