ずんずんザクセンさんは進んでいくけど、ここがどこか知ってるのかな?
「ザクセンさん、どこに向かってるんですか?」
「あてはないが、さっきの場所から離れた方がいいだろう。」
精霊には離れてもあまり意味はないかも。
一瞬で追いつかれちゃうし。
「ザクセンさんはどうしてさっきのところにいたんですか?」
「妖魔の群に襲われて、死にかけたと思ったら、さっきの場面だった。」
それはびっくりするよね。
「王都に知らせがいったということは、知らせに行かせたやつは無事なのか?」
「いえ。知らせてすぐに亡くなったそうです。」
「そうか。」
ザクセンさんの表情が曇る。
「討伐隊のあとの人は?街には誰もいませんでしたけど。」
「街にいなくて、王都に帰ってないということは、みんな死んだな。」
覚悟をしていたのか、冷静だ。
みんなは大丈夫かな?
心配になってきたよ。
そうだ、ここならミツキを呼べるかも。



ミツキを呼びより早く、ミツキが現れて、抱きしめられた。
「よかった。無事だったんだな。」
「・・無事と言えば無事なんだけど。」
私が口ごもると、ミツキが私の首見て顔をしかめた。
何?
ミツキはザクセンさんを睨むし、ザクセンさんはばつが悪い顔をしている。
首・・まさか、さっき首を絞められた時の後でも残っている?
てっきりザクセンさんが正気に戻ったときに一緒に治ったと思ったのに。
ザクセンさんの頭上に、無数の光の刃が現れた。
まずい、ミツキ怒ってる。
「これは事故だよ。ザクセンさんのせいじゃないから。」
何とかミツキを宥める。

「闇のやつにひどいことされなかったか?」
「私闇の精霊に恨まれる覚えないんだけど、どうしてかな?」
今度はミツキがばつの悪い顔をしている。
ミツキには心当たりありそうな感じ。
「ミツキは何か知ってるんでしょう?」
「あいつは、俺がおまえといるのが、気に入らないだけだ。」
「じゃあミツキのせい?」
「そうなるな。」
そんなひどい。
「じゃあミツキが何とかしてよ。」
「ちゃんとお灸はすえとく。」
ミツキが酷薄な笑みを浮かべて言ったから、そうとうひどいことすると思ったけど、もうちょっと殺されるところだったし、かまわない。
ミツキとあの精霊の関係って何だろう?
恋人だったとか?
あの体だもん、たぶん体の関係だよね。
なんかムカつく。
あの精霊と比べたらどうせ私なんて・・。
私嫉妬されてたんだ。
女の嫉妬って怖い。
ミツキはあの精霊のことどう思ってるんだろう?
まだ好きなのかな?
好きだったら、私はミツキにかなり迷惑かけてるよね?
「ミツキあの精霊は・・。」
「心配しなくてもおまえが考えてるような関係じゃない。」
「私何も言ってないよ。心も読まれないようにしたはずなのに。」
「顔を見てたらわかる。おまえ分かりやすすぎ。」



ミツキがわたしのおでこにキスした瞬間、私とザクセンさんは、街に運ばれた。
運んでくれたのは、うれしいけど、一言言ってほしいな。
街には騎士たちが見えるから、まだ王都に戻ってなかったみたい。
「行くか。」
何となく気まずくて、ザクセンさんと目を合わせられない。
もしかして妖魔の群れに街を襲われたのって、あの精霊のせいなのかな?
そうだったらこの騒動は私のせいでもあるわけよね?
みんなにどうゆう顔をして会えばいいのか・・・・。

「俺のこと嫌いになったか?」
ザクセンさんがボソッと小声でつぶやいた。
最初聞き取れなかったのでキョトンっとした顔をしていると、ザクセンさんが頭をガシガシかいた。
「だから、俺のこと嫌いになったか?」
「そんなことないです。」
「俺はもうちょっとでおまえを殺すところだっただろう・・・。」
「それはそうですけど、ザクセンさんのせいじゃないですよね。むしろミツキのせいと言うか・・・。」
見上げると、真剣な目のザクセンさんと目が合った。

「もしあのままおまえを殺していたらと思うと・・・。俺は自分を許せなかっただろう。」
「そんな・・・。」
「すなまなかった。どんなに謝っても足りないだろう。」
「そんなことないです。結局無事だったんですから、気にしないで下さい。」
ザクセンさんは首を横に振ると歩き始めた。
私は何も言えずにザクセンさんの後ろを歩いた。
私が何を言ってもザクセンさんには届かない気がした。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



私たちは会話もなく、みんなのところまで歩いていると、気がついた、リンとアレンが走って迎えにきてくれた。
「心配しました、沙羅様。あちこち探したのですが、全然見つからなくて。ザクセン様ご無事で何よりです。」
「おかえり沙〜羅。」
アレンは元の黒猫の姿。
みんな無事みたいでよかった。
「妖魔はどうなったの?アレンのことはバレちゃったよね?」
「妖魔はみんな逃げていきましたよ。アレンのことは、みんなわかってくれたので、騎士の間の秘密ということになりました。」
騎士の人たちよく理解してくれたな。
もっと反発されると思ったけど。
「いつ王都に帰るの?」
「準備はできてます。沙羅様が見つかり次第帰ることになってました。」
私を待っててくれたのか、申し訳ないな。
「ザクセン様他の騎士は一緒じゃなかったんですか?」
ザクセンさんが首を横に振る。
「・・そうですか。ザクセン様だけでもご無事でよかったです。」
「カイエンはどこにいる?」
「馬で少し離れたところまで探しに行かれたはずです。そろそろ戻られると思います。」
あとでカイエン様にお礼言わないと。
首の手形はここに来る前にミツキが消してくれたらしい。

騎士たちが集まっている場所に向かうと、みんな私とザクセンさんの無事を喜んでくれた。
騎士さんたちには私の魔法で助かったと、えらく感謝されて、困ってしまった。
しばらくしてカイエン様と数人の騎士が帰ってきた。
「沙羅様、ザクセン無事だったんだな。沙羅様よかったですね。」
よかった・・・か。
確かにザクセンさんが生きててよかったんだけど。
「心配をおかけしてすみませんでした。」
「カイエンすまなかった。」
ザクセンさんが突然カイエン様の前に土下座したので、みんなギョッとした。
「討伐隊のことなら、誰もおまえのせいなんて思っていない。私たちだって沙羅様がいなかったら、どうなっていたか。だから顔を上げろ。」
「しかし、俺だけ生き残るなんて・・。」
「死んだ奴らの分まで生きろ。奴らだっておまえを責めたりしないはずだ。みんなおまえを慕ってた奴らばかりだった。」
カイエン様が無理矢理ザクセンさんを立たせると、周りの騎士たちから拍手がわき起こった。









前のページ  「精霊の半身」目次ページ  次のページ

inserted by FC2 system