ーミツキ視点ー


全くフィシスは、厄介なことに自分から首を突っ込むこともないだろうに。
止めても、言い出したら聞かないことは、相変わらずだ。
妖魔の群か・・。
あの周辺で闇の奴の気配が濃いから、闇の奴がからんでることは間違いない。
どうせ闇の奴はろくでもないことを考えているだろう。
そろそろあいつにも、思い知らせてやる必要があるな。
先に妖魔の群とやらを何とかしておくか。



フィシスが王都を出発してすぐに、俺は妖魔の群とやらを殺すために妖魔の巣に向かった。
闇の奴に集められた、寄せ集めの妖魔の群。
数は多いが、妖魔が何千匹いたところでなんの問題もない。
問題は・・。
妖魔を陰で操っていた精霊だ。
いるかもしれないと思ったが、目の前にいるのは、水の精霊王。
闇の奴を崇拝してたっけな。
ああ、面倒だ。
以前フィシスを船で襲った妖魔もこいつが絡んでる可能性あるな。

「お久しぶりです、光の精霊王。こんなところに何かご用ですか?」
何食わぬ顔でぬけぬけとよく言うな。
俺が何をしにきたのかなんて、わかっているだろう。
「お前こそ、こんなところで何をしている?」
俺が睨んでも動じず、笑っている。
ムカつくやつだ。
「わたくしは、もちろん敬愛するあのお方の為ですよ。」
「敬愛ねぇ・・・。あいつには通じないと思うがな。」
「わたくしは、見返りなんて求めていませんよ。ただあの方が微笑んで下されば、それでいいのですから。あなたもあの方を愛していたではありませんか。」
「残念ながら、そんな覚えはないな。」
「忘れたのですか?では思い出して下さい。あの方はあなたがそばにいることをのぞまれています。」
「思い出すも何も、俺たちはそんな関係じゃなかった。」
ただあいつが一方的に・・・。
身体は好みだったから、何度か抱いただけだっていうのに、面倒だ。

「それで、あの妖魔たちはあいつが指示したのか?」
「直接指示されたわけではありませんよ。わたくしが指示されたのは、あなたの足止めだけですよ?」
足止めだと?
俺が離れた隙に、フィシスを殺すつもりか・・・。
早く行かなければ。
こんなところにいる場合ではない。
だが、妖魔の群れはまだここにいる。
こいつらをまず始末しなければ。
目の前のやつが、黙ってみているとは思わないが。

妖魔の群れが一斉に動き始めた。
また街に襲撃に行くつもりかもしれない。
妖魔の群れに攻撃をしかけようとしたら、水に邪魔された。
「あなたの相手はわたくしですよ。よそ見してもらっては、困ります。」
「俺と本気でやるつもりか?」
「ええ、そのつもりですよ。」
チッ、時間がかかりそうだな。

俺とあいつは睨みあって、迂闊に手を出せない。
あいつの狙いもそれだろう。
ああ、イライラする。
俺がこうしている間にも、フィシスがやばいかもしれないのに。

あいつに向けて無数の光の刃を降らすと、そのすべてが、水でたたき落とされた。
今度は、水の塊が俺に向かって放たれたから、俺は水を蒸発させて防ぐ。
気づかれないように、少しずつあいつを閉じ込める為の檻を作って行く。
気づかれないために、光の刃は絶え間なく降らし続ける。

よし、檻の土台ができた。
作った檻の土台に一気に力を注ぎこみ、あいつを中心に周囲10m四方に檻を作った。
俺が慎重に作った檻だ、そう簡単には壊せないはずだ。
あいつにもそれがわかっているはずなのに、笑っている。
妙だ。

「私の役目は十分果たしましたよ。これだけあなたの足止めができれば、あの方は今頃あなたの半身に会っているでしょう。妖魔なんてあなたをおびき出すための餌ですよ。」
俺はまんまと餌に引っかかったわけか。
まずいな。
早く探さなければ。

だがどんなに探ってもフィシスの気配がつかめない。
闇の奴の手に落ちたか・・。








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