ーミツキ視点ー


何かあればすぐに行けるように沙羅の気配を感じながら、人探しをしている。
俺が目覚めてすぐに探し始めたというのに、未だにヴァレリーの行方はわからない。
いったいどうゆうことだ?
俺自身はもちろんだが、光の精霊たちも総動員して探させているのに、手がかりすらつかめない。
いくら強い魔法使いといっても、俺から隠れるなんてできるわけがないのに。
俺と同等級の精霊王が味方しているとしか考えられない。
そうなら厄介だ。
簡単にはいかないだろう。
俺に楯突く精霊王は1人しか思いつかないが。
プライドの高い奴だ。
人間にお人よしで手を貸すような奴じゃない。
俺への腹いせか・・・。



しばらく風に乗って飛んでいると、風の精霊王に会った。
そばにはたくさんの風の精霊が一緒に飛んでいたが、近づいてきたのは精霊王だけだ。
「久しぶりですね。やはりあなたがいないと、どこか色褪せて見えましたよ。」
ティアナと同じ雰囲気の風の精霊王。
常に配下の精霊を連れている。
自分の配下をぞろぞろ引きつれてる気がしれない。
自分に酔いしれている感じの奴だ。
いわゆるナルシストってやつか。

「そうか。ところで闇のやつを知らないか?」
俺に楯突くのはあいつしかいない。
「しばらく見ていませんね。人間と一緒にいるのを見たという話は聞きましたが。」
「人間?どんな人間だ?」
「そこまではわかりません。地から聞いたので聞いてみてください。」
「わかった。」
次は地のやつのところに行くか。
まだ風のやつは俺と話したそうにしているが、もう用はない。
俺は地のやつを気配を探して、そこから飛んだ。



地の精霊王は、森の木陰で寝転がっていた。
俺が近づくと薄目を開けたが、また目を閉じて寝ようとする。
精霊王で一番の怠け者。
いつも寝てばかりいる。
本当にこいつが見たのか?
「おい。聞きたいことがあるんだが。」
返事はない。
本当に寝たのか?
近寄って、耳を引っ張ってみるが反応はない。
「おい。地の・・・起きろ。」
全く反応はない。
「おい。 起きないと永遠に起きれなくするぞ。」
まだ返事はない。
仕方ないので寝れなくなるように眩しい光を出現させると、しばらくしてむっくりと起きて、座った。
「もうちょっと優しくおこしてほしいなぁ。 おはよう。」
「何度も起こしたが、起きなかっただろう。」
「そう? 全然気づかなかったよ。何の用?僕はまだまだ寝たいんだ。」
ゴシゴシ瞼をこする。

「風のやつに聞いたんだが、闇のやつが人間といるのを見たって話だが。」
「ん〜。そんなことあったっけ?」
こいつまだ寝ぼけてるのか?
ゴンと一発げんこつを頭に振りおろしておく。
これで目が覚めるだろう。
「痛いなぁ。 相変わらずだねぇ。」
殴られた頭をさすっているが、痛いとは思えない。
そもそも痛いという感覚は、俺たちにはない。
「思い出したか?」
「・・・・うん。だからもうやめてね。」
俺がもう1発しようとしたのが、わかったらしい。

「それで?」
「うんと。闇と一緒にいたのは、ヴァレリーとかいう人間たちを騒がしている魔法使いだったよ。」
最初からそう言えばいいものを。
やはりそうだったか。
「彼女相当ご立腹だったからねぇ。身から出た錆だよ、光の。」
痛い所を突いてくるな。
こいつはたまに鋭い所を突いてくるから驚かされる。
いったいどちらが本当のこいつなのか、いまだにつかめない。

「闇のやつは、いつから人間と一緒にいるんだ?」
「ん〜。君が半身と契約してすぐからだよ。半身と契約して舞い上がってたからって、注意を怠っちゃだめだったねぇ。」
全くだな。
今更気づかされるとは。
いかに自分が愚かだったか身にしみる。
沙羅の一族が殺されたのは、俺の愚かさが原因とも言えるのか。
おそらく闇のやつが、ヴァレリーと組んで俺を陥れようとしたのだろう。
ヴァレリーは精霊の力がほしかった。
闇のやつは俺を苦しませたかった。
奴らの利害が一致したのか。
その餌として沙羅が使われた・・・。
もっと早く気がついていれば・・・。
いや、もう遅い。
だが、これ以上好き勝手にはさせない。

「どうするつもりだい?」
「さて、どうしたものかな?」
「闇を殺すのは絶対にやめてね。そんなことしたらどうなるか、君もよくわかってるだろう?」
「ああ。殺しはしない。」
闇のやつ居場所なら探れる。
あとはどうするかだな。
「世話になったな。」
「いえいえ。健闘を祈ってるよぉ〜」
言いながら寝転がった。
また寝るつもりらしい。
敵になるくらいなら、寝ていてくれた方ずっといい。
こいつがもし本気になったら、どんなことになるんだろうな。







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