リンは未だにお茶会の時のことを怒っているけど、私はそんなに気にしていない。
あれから2日ほどたっている。
私なんてほんとは、一般庶民だし、貴族に交じって生活するのは間違ってる気がするから。
いつまでも王宮でドレス着てる生活なんて、申し訳なくてしょうがない。
女王陛下もそこまで、私に親切にしてくれなくても大丈夫なのに。
ここに来て最初の頃はともかく、今はここでもなんとか生活できると思う。
街のお医者さんでも、治癒の魔法を使える人はほとんどいないらしいから、街で治癒をして生計をたてるのもできそうだ。
あとお菓子作りが得意だから、お菓子を作って売るとかどうかな?
昨日王宮の厨房を借りて、クッキーを作ったら、みんなに大好評だった。
いっぱい作ったはずなのに、侍女さんたちと食べたら、あっという間になくなっちゃったよ。
またそのうち作ろう。
今度はカイエン様とザクセンさんにも、持っていこう。
2人とも甘いものは大丈夫かな?
ザクセンさんは、ケーキ屋さんに連れてってくれるって言ってたし、甘いもの好きよね。

今日はリンはレオナーさんに呼ばれてるから、私のそばにいない。
リンが心配するといけないから、おとなしく部屋にいるつもり。
レオナーさんから借りた魔法書を読んでいると、ノックが聞こえた。
マリーならノックすると同時ぐらいに、部屋に入ってくるけど、入ってくる様子はない。
誰だろう?
ドアを開けると、ザクセンさんが立っていた。
ザクセンさんが私の部屋に来るのって、初めてだ。
「こんにちわ、ザクセンさん。どうかしたんですか?」
「よぉ。この前話してたケーキ屋行かないか?非番だから暇なんだ。」
「いきます。」
行かせていただきます。
ケーキが私を待っている〜



私は外に着替えてから、ザクセンさんと出掛けた。
天気もいいし、王宮から徒歩で行けるみたい。
ああ、楽しみだなぁ。
今日のザクセンさんは、騎士の恰好とは違って、簡素だけど貴族の紳士らしい恰好。
私はクローゼットのドレスの中で一番地味なものを選んだ。
並んで歩いていても変ではないと思う。
私たちってどう見えるんだろう?
兄妹とかかな?

「ザクセンさんは行ったことあるんですか?」
「いや。俺も初めてだ。1人で行っても仕方ないしな。」
それは男の人1人では、行きにくいよね。
「騎士の人たちとは行かないんですか?」
「飲みには行くが、甘いものは行かないな。」
「騎士の人たちって甘いもの嫌いですか?」
「どうかな?わからん。」
そういう会話ってあんまりしないんだね。
「ザクセンさんは好きなんですよね?」
一緒に行ってくれるぐらいだし。
「まあまあかな。」
じゃあ、無理やりつき合わせちゃったとか?
きっとケーキを食べたら好きになるよね。
ザクセンさんは嫌々という感じじゃない。
むしろ楽しそうな感じもする。



街をこうやってのんびり歩くのって久しぶりだな。
賑わっていて、見ているだけでウキウキしてくる。
「ケーキ屋さんってどれくらいで着くんですか?」
「もうちょっとだ。」
しばらく歩いていると、長蛇の列ができているのが見えた。
もしやあれ?
「ああ、あの店だ。」
すごい人気だな。
私たちも列の最後尾に並ぶ。
ざっと見て30人くらいは並んでると思う。
お店に入るまで時間かかりそう。
「すごい列ですね。」
「ああ。 王都でもここしかないからな。」
それは並ぶよね。
並んでる人たちは、貴族よりも平民っぽい人が多い感じ。
貴族向けの店じゃないから、値段も手ごろなのかな?
私たちの後からもどんどん列が伸びていく。
売り切れたりしないのかな?

「ザクセンさんは退屈じゃないですか? 私に付き合ってくれたんでしょう?」
ザクセンさんは長蛇の列を見ても、嫌がる感じはないけど、待つのは退屈なんじゃかな?
待つのを嫌いな人って多いじゃない。
私は待つのは苦じゃない。
ケーキの為だもん。
某ネズミの遊園地で、何時間も待つのだって頑張れるし。
私はあそこ大好きなんだけど、もう行けないのは残念。
「大丈夫だ。 沙羅の顔見てたら退屈しない。」
ザクセンさんは笑って言ったけど、それって私の顔が面白いってこと?
そんなにおもしろい顔してないつもり・・・。
「ザクセンさんひどい・・・。」
私がうらみがましい目で見つめると、ザクセンさんは頭を掻いた。
「そうゆう意味じゃないんだが。 沙羅って表情がくるくる変わるから、そこが見ていて飽きない。 さっきまでニコニコしていたと思ったら、急に暗い顔になったり、すぐに焦ったり。」
私は喜怒哀楽が激しいのかな?
「そうですか。」









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