侍女さん達に朝からコルセットでギュウギュウ締め付けられ、歩きにくいドレスを着せられ、重たい鬘を被らされた。
今日はルイーゼのお茶会の日。
付き添いとしてリンが一緒に来てくれる。
ルイーゼにどうしてもリオを連れてくるように頼まれたので、リオを無理やり馬車に押し込めて、出発した。
精霊はあまり歓迎されないらしく、ティアナはお留守番。
旅から帰ってから、リオは自室に再び軟禁されていた。
今回は腕利きの魔法使いと、半身持ちの魔法使いが揃ってリオの部屋に魔法をかけて閉じ込めたので、リオもでられなかったらしい。
他にも半身を持った人がいるとは知らなかったので、後で会わせてもらおうと思う。



「どうして俺まで・・・。」
馬車の中でもリオは文句を言っている。
「ルイーゼからのお誘いです。 是非リオ様にも出席してほしいとのことです。しばらく部屋から出れれなかったみたいですから、いい気分転換になるのではないですか?」
いつまでもグチグチ男らしくないなぁ。
馬車に乗せるまで1時間もかかっちゃったよ。
これじゃあお茶会に送れちゃうじゃん。
リオのせいだからね。
向かい側に座ったリオを睨む。

私の隣にはいつもの侍女の恰好を少し華やかにした感じの服装のリン。
「何がそんなに嫌なんですか?」
「ルイーゼのところだろう?」
そんなに嫌かな?
お茶会苦手なのかな?
「今回はカール殿下も、カイエン様も参加されるそうですよ。」
リオが愚痴るのをやめて、私を見た。
「叔父上とカイエンもか?」
「そうですよ。」
「・・・そうか。」
それっきりリオは黙ってしまった。
さっきまでと目つきが違う。
でも出席する気になったみたいでよかった。

お茶会って、みんな優雅にお茶を飲むだけなのかな?
誰も教えてくれなかった。
リンも初めてで緊張しているみたい。
今まで貴族と関わることなんて、ほとんどなかったんだろうな。
ザクセンさんは貴族だけど、貴族っぽくないし。
「リオ様は、お茶会って参加されたことありますよね?どんな感じなんですか?」
「茶会の主催者にもよるが、今回は若い貴族連中を集めて、親睦を深めるのが目的だろう。」

貴族いっぱいかぁ。
私浮いちゃうじゃん。
ルイーゼはともかく他の貴族の人って普通に話したことないな。
前は絡まれただけだし。
またカイエン様はご令嬢たちに囲まれるだろうな。
それはちょっと嫌。
別にカイエン様は私のじゃないけど。

「あいつらは噂好きだからな。 注意しろよ。」
噂・・。
ルイーゼから教えてもらったから、貴族の間で、カイエン様とカール殿下の決闘の噂って、かなり広まってる?
私たちって噂の的になりそうで、怖い。
カール殿下とカイエン様は、もう着いてるかな?



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馬車がルイーゼの家に着くと、リオが先に降りて、私に手を差し出してくれた。
ドレスだと馬車の乗り降りが苦労するので、ありがたくリオの手に掴まる。
「ありがとうございます。」
リンが降りると、馬車は行ってしまった。
また帰る時に迎えに来てくれるらしい。

このまえ案内してくれた執事さんが、私たちを会場まで案内してくれた。
リオは無言で、私の手を引いて歩き始めた。
またルイーゼに誤解されないといいけど。
お茶会はルイーゼの家の庭園で行われていた。

会場の真ん中で、ルイーゼが数人の貴族の男女と談笑している。
まずは挨拶しないと。
会場に入ると、かなりの視線と、私たちを見て囁きあう人たちを感じた。
噂のせいか、どうかはわからない。

ルイーゼの近くまでくると、人垣が崩れて、私たちに道をあけてくれた。
「よく来てくださいましたわ、リオ様、沙羅。」
この前のパーティーほどじゃないけど、かなり着飾ったルイーゼは、綺麗だ。
私が挨拶しようとして、手を放そうとしたけど、なかなか放してくれないので、力ずくで放す。
「お招きありがとうございます。」
態度が普通だったので、ルイーゼに誤解されていないみたい。

「お招きありがとう。 今日は楽しませもらうよ。」
馬車までとは違って、にこやかにリオが言うと、ルイーゼの手の甲を取って、手にキスをした。
いつものリオと違いすぎる。
私は唖然とした。
こういう態度もとれるんじゃない。
私とのあの態度の違いって何?
どうせ私はルイーゼ見たいに綺麗じゃないですよ〜だ。
何故かちょっと腹が立った。
端の方にザクセンさんとカイエン様が話しているのが見えたので、無言でそちらへ向かった。
リンは、侍女の控え室で待機中だ。



ざっと見て100人以上の人が来ている。
お茶会といっても、座ってお茶を飲んでいるのは、数えるほどだ。
メイドさんから、虹色の飲み物が入ったグラスを受け取った。
ご令嬢たちが飲んでいる飲み物だから、ジュースだろう。
コルセットのおかげで、食べ物は口にできないけど、おなかがすいたから、これで我慢。
グラスを持って歩けないので、その場で一気に飲むと、果物の甘さとアルコール特有の香りがした。
これお酒じゃん。
まあ、飲んじゃったし、いいか。

カイエン様とザクセンさん2人しか見えなかったけど、2人の陰にカール殿下もいた。
カイエン様とザクセンさんは背が高いから、見えなかったみたい。
3人揃っていると、近づきにくいオーラがある。
遠巻きに見ていて、誰も近寄っていかない。
3人ともかっこいいんだよね。
見ているだけでも目の保養になるよ。

なんで決闘なんかしたんだろう?
私が詳細知りたいよ。
カイエン様とは、旅にでる前は、けっこういい感じだったけど、帰ってきてからは、そんな雰囲気になれないな。
嫌われてはいないと思うけど。
私ってカイエン様のこと好きなのかな?
自分でよくわからないよ。
キスしたときは、なんとなく流れで・・。
今思い出したら、恥ずかしい。








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