マリーさんとリンも自分の部屋に戻ったので、寝る前にひさしぶりにテラスに出てみた。
アレンはリンが無理やり、一緒に連れていった。
草原で見たほどではないけど、今日も夜空は綺麗だった。
元の世界とは大違いだな。
ぼんやり眺めていると、ミツキが来た。
あれ?
私呼んでないけど。
「お前が呼んだら、絶対に行くが、俺が来たくても行く。」
なるほど。

ちょうどいいからさっきの魔法試してみよう。
どうかな?
ねぇ私の心まだ読める?
ミツキからは何の反応もない。
精霊王にはきかないのかな?
私はミツキが好きだよ・・・。
好き好き好き。
これで何か反応があるでしょう。
反応なし・・・。
成功?

「何か魔法使ったのか?」
「心を読まれない魔法。 どう?」
「読めなくなったのはおもしろくないが、お前が魔法を使えるように成長したのはいいことだな。」
「ありがとう。」

「これからどうするか決めたのか?」
「まだしばらく王宮にいることになっちゃった。また村にも行きたいなぁ。草原のみんなに会いたいし。」
「行きたかったらいつでも連れて行ってやる。」
「うん。ミツキは私に何か用事だったの?」
「別に用はない。お前がどうしてるか気になっただけだ。」
「そっかぁ。」

私は昔みたいにミツキに抱きついた。
昔はほんと何も考えずに抱きついてたなぁ。
今はちょっと、躊躇っちゃうけど、たまにはいいよね。
ミツキは私のだ。



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次の日は朝からひさしぶりに訓練場に行った。
そこでカイエン様が騎士たちをしごいているのは、見慣れた光景だったけど、騎士に交じって、カール殿下がいた。
なんでここにカール殿下が?
「カール殿下って今まで訓練に参加してたの?」
「いいえ。 わたしがいた頃は1度も参加されてないはずです。」
リンもびっくりしている。
いったいどんな変化があったのだろうか?

ザクセンさんもしっかり訓練に参加している。
邪魔すると悪いので、しばらく見学していると、休憩時間にカイエン様とザクセンさんが来てくれた。
「おはようございます、カイエン様、ザクセンさん。」
「おはようございます、沙羅様。昨日はよく眠れましたか?」
「はい。」
ひさしぶりに優しいカイエン様の声を聞いたな。
さっきの訓練では怒鳴ってばっかりだったし。

「沙羅にルイーゼから伝言。 こんどお茶会するから来てほしいって。」
「私、お茶会の作法なんて知りませんよ。」
いきなり困るよ〜
「大丈夫だ。 堅苦しいものじゃないから。カイエンも強制参加な。」
「私もか?」
カイエン様も困ってるみたい。
私とカイエン様は顔を見合わせて苦笑した。



しばらく談笑していると、カール殿下が近づいてきたので、挨拶した。
「お久しぶりです、カール殿下。」
ネックレスから指輪を外して、カール殿下に返した。
「お預かりした指輪返しますね。」
「無事でよかったよ。」
笑って受け取ってくれたカール殿下は、なんだか前と雰囲気が違った。
訓練に参加していただけあって、体つきも引き締まって、精悍な感じになった気がする。
以前はこんな風に訓練で汗を流すなんて想像できなかった。

「騎士の訓練に参加されるなんて、どうされたんですか?」
「まあ僕にも色々あったんだよ。」
色々が気になるんだけど。

「それよりさっきお茶会の話をしていたようだけど。」
よく聞こえてたなぁ。
「僕も行ってもかまわないかな?」
「それはいいと思いますが。うちの妹のお茶会なんて今まで、ご招待しても来て下さらなかったですよね?」
「そうだね。ルイーゼ嬢はリオにあまりにも夢中だからね。僕と話が合うとは思えなかったんだよ。今回は沙羅とカイエンも行くんだろう?だったら行かないわけにはね。」
「・・・そうですか。 招待状を送りますよ。」
私とカイエン様が参加するから?
カール殿下はそのまま行ってしまった。

「いつのまにカイエン様とカール殿下は仲良くなったんですか?」
「色々あったのですよ。」
こっちも色々ですか。
カイエン様は困った顔をして、訓練に戻ってしまった。

いったい何があったんだか。
「ルイーゼの噂はマジみたいだな。それをきっかけにカール殿下が訓練に参加するようになったらしい。」
「噂ってどこまでが本当なんですか?」
「全部じゃないか?」
全部って、私がその決闘に関係しているってこと?
「女冥利につきるだろう。」
ハハッって笑いながら、ザクセンさんも訓練に戻った。
わけがわからないんですが・・・・。
誰か私にも説明してちょうだい。



2日後にルイーゼからお茶会の招待状が届いた。









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