リオが先に王宮に帰ってくれたおかげで、私たちが王宮に到着すると、すぐに女王陛下に謁見することができた。
ルイーゼはリオに会うために、王宮の途中で別れ、私たちは謁見室へ。

謁見室には女王陛下、レオナーさん、カイエン様がいた。
私たちが女王陛下まであと5歩くらいの距離まで近づいたときに、リンとザクセンさんは、跪いたから、びっくり。
今までそんなことしたことない。
私もした方がいいかな?
迷っていると、女王陛下から手でしなくていいと言われた。
ああ、びっくりした。

「ザクセン、リン、お立ちなさい。」
2人が立ち上がった。
「みな無事で安心しました。話はリオから聞いています。沙羅は目的を果たせたみたいですね。」
「はい、わがままを聞いてくださり、ありがとうございました。それと・・リオ様についてきていただき、申し訳ありませんでした。」
私がペコッとお辞儀をして、顔を上げたときには、女王陛下は微笑んでいたから、怒ってはいないみたい。

「あれは、本当に困った子です。時期王位継承者としての自覚がないにもほどがありますね。沙羅が気に病むことはありませんよ。」
「はい。」
「ザクセンとリンは、長旅御苦労でした。好きなだけ休暇を取ってかまいませんよ。休暇の後は、今まで通り近衛騎士として働いてください。」
「はい、ですが休暇はいりません。できれば明日からでも仕事に戻りたいのですが、よろしいでしょうか?」
ザクセンさんは仕事熱心だな。
さすがにしばらく留守にしていたから、騎士団のことが気になるのかな?
「許可します。」

「・・あの陛下・・・。」
リンが言いにくそうにしている。
かなり緊張しているように見えるから、今まで女王陛下とあまり話したことがないのかも。
お風呂場で話していた件かな?

「どうしましたか、リン。」
「はい。 私は近衛騎士ではなく、沙羅様の護衛を続けさせていただけないでしょうか?」
女王陛下とレオナーさんとカイエン様が顔を見合わせた。
「カイエンはどう思いますか?」
「リンの希望であれば、許可していいと思います。」
「レオナーはどう思いますか?」
「私も許可していいと思います。」
後ろを見ていた女王陛下が、こっちに向き直った。
「ではリン。沙羅の護衛を続けることを許可します。」
リンがホッとして肩の力を抜いたようだ。

さっきのルイーゼから聞いた噂を思い出して、ついチラチラカイエン様を見てしまう。
本当なんだろうか?
カイエン様は私と目が合うと、一瞬だけ微笑んでくれる。
あくまで噂だからね。
それよりこれからのことを話さなくちゃ。
リンには悪いけど、ミツキもいるし、王宮にいつまでも居候するのも悪いし、どこか別の場所に落ち着くことも考えないと。



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「沙羅は、やはり件の少女だったのですね。」
「はい・・。」
「記憶も戻って、半身も見つかったとか。本当によかったですね。ところで・・・。」
コホンッと女王陛下が咳払いした。
何だろう?

「沙羅の半身は精霊王の1人だという話なのですが、1度会わせてもらえませんか?」
精霊王って珍しいからかな?
「今ここでですか?」
女王陛下はワクワクした期待にみちた目をしている。
そこまで見たいのかな?
「ミツキ」
私が名前を呼ぶと、次の瞬間にはミツキが目の前にいた。
ほんといつもどこにいるんだろう?
すぐに来てくれるから、近くにいるのかな?

ミツキは女王陛下にもいつもの様子を崩すことはしない。
何か用かと、女王陛下にがんをつけてる。
それはまずいと思うよ・・。
「あなたが精霊王ですか。 1度お会いしたかった。」
「用はそれだけか?」
私が頷くと、またミツキは消えてしまった。
早いなぁ。
忙しいのかな?
こんなのでよかったのかな?
女王陛下を見ると、満足そうだから、大丈夫みたい。
「精霊王は美形だったわね〜」

そうそう忘れるところだった。
レオナーさんに心を読まれない方法聞かないと。
「あの。 半身に心を読まれない方法とか知らないですか?」
女王陛下がレオナーさんを振り返った。
「あとで詳しく記されている魔法の本を渡そう。」
やった。
問題解決しそう。
「ありがとうございます。それと近いうちに王宮を出ようと思うのですが。」
「却下。」
私が言い終わらないうちに、女王陛下に却下された。
「いつまでもお世話になるわけには。」
「そんなことは気にしなくていいのです。沙羅は今しばらくここに滞在しなさい。」
「でも・・」
「これは命令です。」
私は反論も許されず、謁見はお開きとなった。
釈然としない。



謁見室を出たところで、ザクセンさんとリンと別れ、私は旅に行くまで使っていた部屋に、つれていかれた。
旅にでる前と何も変わっていない部屋。
すぐにマリーがやってきて、暖かく迎えてくれた。
「おかえりなさいませ、沙羅様。」
「ただいま、マリー。またしばらくよろしくお願いします。」
「はい、お任せ下さい。」

頼んでいた魔法の本は、すぐ届いたので、さっそく練習開始だ。
リンは侍女の格好に着替えて、アレンを連れてやってきた。
アレンはここでこっそり飼うつもりだ。









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