ーリン視点ー


自分のこの赤い髪を見ると憂鬱になります。
この髪と目を喜んだのは、母親ぐらいでした。
父はもともと母の半身の精霊だったそうです、どうゆう経緯かそれが夫婦に変わってしまった。
傍で見ていても迷惑なぐらいの幸せオーラ全開のカップルでした。
いつか私もあんな恋愛ができたらと思います。
でも、5年ほど前に母が急な病で死んでから、父は行方不明。
父は母以外には無関心でしたから、この結果も当然です。
私は父にかわいがられた覚えは1度もないです。
精霊というのはもともと親子の情はほとんどないそうです。
精霊同士が交わって生まれるというものではなく、自然に生まれるみたいです。


私たちは人里離れた山奥で家族だけで住んでいました。
親戚なんているのかどうかも知りません。
幸い小さな頃から生きていく術を、母親から叩きこまれいたので、1人でも何とか生活するつもりでした。
普通の人間が精霊と人間のハーフを嫌うということも聞いていたので、目くらましの術もバッチリです。
父親ほどではありませんが、魔力もあるので、魔法もそこそこ使えます。
たまに失敗するけど、それもご愛嬌。


私はいつものように炎の魔法を練習して、ちょっと失敗して大きな山火事を起こしてしまったのです。
たまたま視察で巡回していたレオナー様が駆けつけて、山火事は無事消えました。
レオナー様は、私の正体に気がついたけれど、嫌がらず、私を引き取ってくれました。
それから私はレオナー様のもとで魔法を学びました。
レオナー様から魔法使いのお墨付きをもらってから、騎士として近衛騎士団に所属。
それからしばらくして、沙羅さまに仕えて、今に至ります。


私の正体を知ったら沙羅さまに嫌われるのではないかと、不安でした。
沙羅さまって、綺麗だし、優しいし、私の憧れなんです。
その沙羅さまに不意打ちでキスしたカール殿下には、軽く殺意がわきましたが・・・。
でも沙羅さまは私の事を嫌わないばかりか、励まして下さいました。
本当にうれしいです。
これからも精一杯お仕えします。
もうこの前のようなめにはあわせません。
あのクラウドとかいう男も今度会ったら、ただではすませませんよ。
ふふふふっ。


さぁ、そろそろ沙羅さまを起こしに行きましょう。
私としては、沙羅さまと同じ部屋の方いいのですが、沙羅さまが1人部屋を希望されたので、仕方なくあきらめました。
もっと沙羅さまと一緒にいたいのに。
沙羅さまのお部屋をノックしたけれど、お返事はありませんでした。
静かにお部屋に入らせていただくと、ベッドでスヤススヤ寝ておられます。
とても気持ちよさそうで、起こせそうもありません。
ふと枕元に、光るものを見つけました。
拾ってみると、お守りとしてよく持たれている石でした。
沙羅さまが持っていた覚えはありません。
私が知っているのは、ザクセン様が持っていたぐらいで・・・・。
昨晩私が部屋を出るときにはなかったはずです。
ということは、そのあと沙羅さまと何かあったということでしょうか?
もしザクセン様が沙羅さまに手を出したとなら、許してはおけません。


私はザクセン様の部屋のドアを乱暴に叩きました。
すると眠そうなザクセン様が、欠伸をしながら出てこられました。
私は睨みながら、さっき拾った石を見せました。
「沙羅さまのお部屋で見つけたのですが、ザクセン様の物ではありませんか?」
「落としてたか? ありがとな。」
ザクセン様は何食わぬ顔で受け取りました。
「どうして落ちていたんですか?」
「夜中にベッドまで運んだからじゃないか?」
はぁ?
今聞き捨てならない言葉を聞いた気がします。
何故ベッドまで運ぶ必要があったのか・・・。
何もなかったとしても、夜中に沙羅さまと一緒にいたということですね。
「どうしてそうゆうことになったのですか?」
「沙羅がお酒を飲んで、動けなくなったから。」
お酒・・・・。
沙羅さまを酔わせていかがわしいことをしようなんて、思っていたわけではないですよね?
ザクセン様に限ってそれないと思いたいです。
「別に何もしてないから、心配するな。」
ちょっとザクセン様が焦っていた。
怪しい・・・。
私がさらに追及しようとすると、身支度を整えた沙羅さまがやってきた。
「おはようございます、ザクセン様。おはよう、リン。」
沙羅さま今日も綺麗です。
私は少し見とれていたので挨拶が遅れた。
「よく眠れたか?」
「はい、ぐっすりです。昨晩はありがとうございました。」
沙羅さまとザクセン様の雰囲気は、何かあったような感じではない。
本当に何もなかったようだ。






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