眩しさにくらんだ目を開けると、うっそうと生い茂った森の中。
猛獣とか出てきそうな雰囲気だ。
豹とか、ライオンとか。
毒蛇も出そう。

キョロキョロ周りを見てみると、リオとティアナ発見。
リオは金髪碧眼で12、3歳くらいに見える。
ティアナは髪も目も緑で25歳くらいかな。

「あら、沙羅は髪も目も黒でめずらしいですわね。」
リオがしげしげと私を見ている。
「そうですね。それにとっても美人で。よかったですね、リオ」
にっこりとリオに微笑みかけるティアナに、リオはプイッと顔をそむけた。
ティアナに美人と言われてもお世辞にしか聞こえない。
ティアナは私が今まで見た中で一番の美人だ。
なんとなく不思議な雰囲気がある。
それにしてもどうやってさっきの所から出たのやら。
やっぱり魔法かな?
ティアナは魔法使いかな。

「あの、地下室からどうやって出たんですか? ここどこですか?」
「風でここまで運びました。さっきの所から10キロほど離れた所です。」
10キロってけっこう離れたね。
とりあえず安全みたい。
でも早く帰りたい。
ここに来れたのだから、帰ることもできるでしょう。

「沙羅は精霊も知らないらしいですわ。どうしてあそこにいたかも不明ですけど、追っ手が来ないうちにさっさと行きますわよ。」
そう言うとリオはどんどん歩いていく。
ティアナが何故か悲しそうな顔をしていたのが気になった。
リオとティアナの後ろに付いていきながら、ティアナに小声で話しかける。
「ティアナどうかしたの?」
「私は風の精霊なので、精霊を知らないと聞いて少し悲しかったのです。」
俯くティアナに申し訳なくて謝ると、笑ってくれた。

ティアナが精霊だったとは。
確かに普通の人とは違う感じがしたけど。
精霊ってもっと神秘的で、透明なイメージ。
実体があるというより、透けてる感じ。
でも精霊なら魔法が使えたのも納得。
何でもありな感じ。
ティアナなら帰り方知ってるかな?

「ティアナ、私は精霊とか、魔法とかない日本から来たんだけど、帰り方知らないよね?」
ダメかもと思いつつ聞いてみる。
「ニホンですか、知らないですね。魔法も精霊も存在しないなんて、びっくりです。そんなところあるのですね。」
ティアナはかなり驚いていた。
いやいや、魔法も精霊もないのが、普通だから。
ティアナも知らないのか・・。
これは帰るのが難しい?
ショックだ・・・。
「あなた1人くらい面倒をみてあげますわ。そのうち帰り方もわかるでしょう。わたくしに任せておきなさい。」
リオが振り返って励ましてくれた。
ちょっとうれしい。
自分より小さい子に慰められるなんて、恥ずかしい気もするけど。
「リオが優しくするなんて・・・・。」
ティアナはぎゅうぎゅうリオを抱きしめていた。

「ところでどこに向かってるの?」
全くこの世界がわからない私には、どうせ聞いてもわからないけど。
「街に決まってますわ。」
リオが高飛車に言う。
「でも街は反対方向ですよ。」
リオは一瞬固まったけど、すぐに怒って、街の方向に方向転換して、さっさと歩き始めた。
意外とそそっかしいみたい。
欠点がある方が親しみがあっていいや。
ティアナがリオを追いかけて宥めている。
私もすぐに後追った。 



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森の中を歩き続けること2時間ほど、歩いても歩いても森以外見えない。
いったいいつになったら街にたどり着けるのだろう。
道とは言えないようなところを歩いているから余計疲れた。
ローファーじゃなくてせめてスニーカーだったらよかったな。

「街まであとどのくらいで着くのですか?」
「そうですね。あと2日もあれば着けるはずですよ。」
ティアナは平然と答えてくれたけど、私は脱力・・。
あと2日も歩けないよ・・・。
私より小さいリオが頑張ってるんだし、私も頑張らなきゃいけないのはわかるけど・・・。
無理。絶対無理。

「そろそろ沙羅は疲れたんじゃなんですか? 休憩しましょう。」
リオの提案でひとまず休憩。
木の幹に腰を下ろす。
「2人ともお腹すかないの?」
「私は精霊ですから、食べないです。リオは私と契約してますから、食べなくても大丈夫です。沙羅さんはお腹すいてますか?」
ティアナはどこから取り出したのか林檎みたいな果物をくれたので、遠慮なくかじりついた。
食べなくていいって便利だね。
甘くて美味しい。
異世界でも同じような物があるとほっとする。
3個も食べたからおなかいっぱい。


休憩の間ティアナから契約について説明してもらった。
契約とは人間と精霊でする。
誰とでもできるわけではなく、契約できる相手を半身と言い、探すのは苦労する。
場合によっては一生見つからないことも。
出会った瞬間に自分の半身だとわかるらしいが、一目惚れみたいなものかな?
普通精霊は半分以下の力しか使うことができず、契約すると全力まで使えて、半身の側だと力は2倍以上出せるから、強くなりたい精霊は躍起になって半身を探す。
精霊にも色々いるから、別に半身がいなくてもいいやっという精霊もいる。
精霊を見れる魔力があるか、その精霊の半身の人間しか、精霊は普段見えない。
契約した人間の方は、空腹がほとんどなくなり、魔力が上がったり、力が上がったりするし、強力なボディーガードも手に入ると。
精霊が自然の中からエネルギーを補給し、半身にもそのエネルギーが補給される。
普通精霊は死なないけど、契約した半身が死ぬと、精霊も死んでしまう。
普通に生活する分には必要なさそうなだ。
だいたい契約に関してはわかったかな。


もうすぐ日暮れなので今日はここで野宿決定。
リオはいつのまにか近くの川に水浴びに行ったので、私もすぐ追いかけた。
1人で入るより、2人の方が安心だよね。
何が起きるかわからない。
女の子同士だから一緒に入ってもいいよね。
でも私は後悔することになった。
裸で水浴びしてるリオは女の子じゃなかった。
あんなにかわいいのに
リオの裸にしばし固まる私。
急いで川に飛び込むリオ
「うそぉ?」
私は大絶叫。
ティアナはすぐに駆けつけたけど、説明すると爆笑された。
リオいわく似合うからいいとのこと。
確かに似合うけどさ。
念のため確認したらティアナは女性で間違いなかった。




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