目が覚めると、薄暗くカビ臭い部屋だった。
ここどこ・・・・?
私は確か電車の中にいたよね・・・?
夢の中かな?

とりあえず右頬をおもいっきりつねってみる。
めちゃくちゃ痛い。
痛すぎて涙が出てくる。
ということは現実?

段々と暗い室内に目が慣れてきたので、キョロキョロと辺りを見渡す。
そこで部屋の隅に他にも人がいることがわかたった。
よかった、他にも人がいたんだ

「あの・・・すいません」
言いながら近寄っていくと、そこにいたのはものすごい美少女だった。
髪は縦巻きロールで、ドレスを着たコスプレ少女・・・・。
かわいいなぁ。
鬘だよね?
地毛だったら大変そう。
あとで写メ撮らせてもらおう。

そんなことを考えていると、凄みをきかした目で睨まれた。
美少女が睨むとこわい。

「ジロジロ見て失礼ですわね。」
高飛車に少女がつぶやく。
うわぁ、すごい話し方。
完璧にお嬢様になりきってる。
それとも本物のお嬢様?
「あっ、私は桐生沙羅といいます。ここはどこで、あなたは誰ですか?」
愛想笑いを浮かべつつ聞いてみた。

「わたくしはリオですわ。ここはヴァレリーの隠れ家の地下室だと思いますわ。」
リオっていうのかなぁ。
外人ぽい名前だな。
でもちょっと意味不明。
「ヴァレリーって誰? なんで私たちはこんなところに入れられてるの?」

リオはあからさまにあきれたような顔をしている
「ヴァレリーを知らないなんて、かなりの田舎者ですわね。ヴァレリーは悪名高い大魔法使いですわ。」
リオは平然と話しているけど、私には冗談にしか聞こえない。
魔法使い??
ありでないでしょ
やっぱり夢?
ドッキリ?
そうだ、もう1回寝てみよう。
起きたら電車の中であることを祈りつつ、再び眠りの中へ。

しかしリオにペチペチと頬を叩いて起こされた。
やっぱり起きても状況はかわらず、夢ではないらしい。
「あなたは?、話しているときにいきない寝るなんて失礼ですわ」
リオはかなりご立腹。
でもそれどころじゃないし、夢じゃないならいったいどこ?
とりあえず情報収集よね。

「わたくしの半身が上位精霊だから、人質に捕まったに決まってますわ。あなたの半身も上位精霊じゃありませんの?」
当然とばかりにリオは話しているが、謎は深まるばかり・・・。
「上位精霊???」
「精霊ももしかして知らないんですの? いったいどこから来たんですの? ありえないですわ。だったらなぜここに?」
リオはぶつぶつつぶやいている。

私が知りたいよ。
私に誰か説明してよ。
私の平穏な夏休みはどこへ?
夏休み〜〜〜。


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このままこうしていてもしょうがないよね。
とりあえずこの部屋を調べてみよう。
6畳ぐらいの部屋に窓はなく鉄の扉が1つ。
扉をいじってみるけど鍵がかかっているみたいで開かない。

お腹すいた。
普通なら今頃家でごはん食べてるはずだ。
鞄に何か入ってたかも。
あらためて鞄を探したけど見つからない。
鞄がないと携帯電話もないし、リオの写メも撮れないよ。
残念。
写メは諦めよう。


「ちょっと落ち着いたらいかが?」
室内をウロウロしていると、リオがつぶやいた。
「はい」
返事をしてリオの正面に座る。
私は何故か正座してしまった。
リオってなんだか偉そうだ。
私より小さいのに、威厳がある。

ここはもしかして異世界とか?
少なくともあそこには、魔法なんてものは存在しない。
このリオって子が嘘をついていない限りは、私の知る世界ではないということだろう。
どうして私がここにいるかは、さっぱりだけど、来てしまったものはどうしようもない。
どうやったら帰れるかな?
まずは地下室から脱出よ。
さっさとこの暗いところから出て、綺麗な空気吸いたい。


しばらく考えに没頭していると、いきなり知らない女性の声がした。
「遅くなってすいません、リオ。迎えにきましたよ。」
そう言ってリオを抱きしめた女性はかなりの美女。
「ほんとに遅かったですわね。さっさとこんな所出ていきますわよ。沙羅もついでに連れていきますわ。」
女性の抱擁から離れたリオは私を指さす。
リオに言われてやっと私の存在に気がついたらしく、私の方を向いた。
「桐生沙羅です。どうも」
軽く頭を下げる。

いったいどこから入ってきたの?
さっき確認したけど、ドアには鍵がかかっていたはず。
これも魔法ってやつですか・・。
「私はティアナです。リオがご迷惑をおかけしませんでしたか?」
心配そうにティアナに尋ねられたので、首を振った。
「私の方が迷惑をかけたと思います。」
と言うと安心したみたい。
ティアナは心配性らしい。

「では行きましょう」
ティアナがニッコリ微笑むと3人を風が包み込み、次の瞬間には明るい森の中にいた。




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